ギャング・オブ・ニューヨーク』

ニューヨーカーであるマーティン・スコセッシ監督がNYの歴史を描く. しかもあのダニエル・デイ=ルイスの復帰作. さらにキャメロン・ディアスは『イン・ハー・シューズ』で演技派として高い評価を受けたばかり. これだけ素晴らしい要素が詰まっていればさぞかし面白い映画になるはずだったのに、全く以って魂が熱くならない映画でした. 思えばマーティン・スコッセシ監督の実力に明確な衰えを感じ始めたのはこの頃だったかも知れませんね. マーティン・スコセッシ監督自らが説得に赴き、フェラガモ靴職人としての修行を重ねていたダイエル・デイ=ルイスを俳優として復帰させたこの映画. そのダニエル・デイ=ルイスの演技及び存在感というのがとにかく物凄いこと. 『ボクサー』 以来5年というブランクがあり、その間も俳優という仕事から離れていたのにこの強烈なインパクトは恐ろしかったです. でも映画ではどう見ても助演なのに、なぜアカデミーでは主演男優賞にノミネートされていたんでしょう? まぁそんなことはさておき、この映画を振り返ると素晴らしいと思えるのはこのダニエル・デイ=ルイスの演技力以外何もないんですよね. 確かにレオナルド・ディカプリオも頑張ってはいたのですが、やはりダニエル・デイ=ルイスの前ではインパクトが弱いこと. さらに『イン・ハー・シューズ』で演技派へ転向か? とまで評価されたキャメロン・ディアスも期待ほどにインパクトなしと、どこか一度引退したスポーツ選手に現役実力選手や今が旬の伸び盛りの選手がなす術もなく負けてしまったという印象しか残らないんですよ. ですからこの映画はダニエル・デイ=ルイスを復帰させたということがいい方向にも悪い方向にも出てしまったいるのが非常にもったいないと思えてしまうんですよね. そしてこの映画で一番ダメなのは何と言ってもマーティン・スコセッシ監督の熱き魂のなさ. かつては同じニューヨーカーであるロバート・デ・ニーロと共にNYを舞台に 『タクシードライバー』 など、NYの様々な顔をNYに対する熱き愛を持って映画で見せてくれた監督だったのに、いざNYの歴史という一番熱き魂が入るはずの題材でまさかの腑抜けとも言えるこの情けなさ. 絶対にここは「これが俺の愛するNYの歴史や! 」という熱き魂をスクリーンから嫌っちゅうほど観客に感じさせなければいけないのに、そんな熱き魂は微塵も感じれないなんてびっくりですよ. この気持ちはまさに『ジャンヌ・ダルク』を見たときと同じ. モンスターケーブル リュック・ベッソンマーティン・スコセッシも母国の英雄に対する敬意や出身地に対する想いってそんなものなのか! と怒りたくなるほどでしたね. もうこんな熱き魂のない映画を撮るようではマーティン・スコセッシ監督もダメダメですよ. てな訳でこの映画以降、何かと映画に出演し続けているダニエル・デイ=ルイスはもう靴職人としてイタリアへ戻る気はないのか? というか修行は終わったの? という疑問が未だに解決されていないことが少し気になる今日この頃でした. 深夜らじお@の映画館 は昔のマーティン・スコッセシ監督に戻ってほしいです.